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漢方医学のおはなし 4 不眠症

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こんにちは。
今回は不眠症に使う漢方のお話しをしたいと思います。

人はおおよそ、生涯の1/3を睡眠に使います。仮に寿命を75年と考えれば、実に25年と言うとてつもない時間を睡眠に費やすのです。それもそのはず、睡眠は生命維持に欠かすことの出来ない「大切な行為」なのです。

人は(というより生物すべてが)睡眠中に、心身の休息、記憶の再構成などを行っていると考えられており、また下垂体前葉から分泌される成長ホルモンは、睡眠中に2時間から3時間の間隔で分泌すると考えられています。この成長ホルモンは、子供の成長や創傷治癒、肌の新陳代謝を促す非常に大切なホルモンです。その他にも睡眠は、免疫力の向上やストレスの除去といった役割があるとされており、睡眠が如何に「大切な行為」であるかお分かりいただけると思います。

しかしながら、この大事な「睡眠」という行為がなんらかの原因で上手くいかなくなることがあります。これを「不眠(症)」と呼びます。

日本睡眠学会の定義では厳密に不眠(症)とは、
①:入眠障害、中間覚醒、熟眠障害、早朝覚醒の訴えがある
②:①の愁訴が週2回以上かつ、1ヶ月以上続いている
③:苦痛もしくは、日常活動に影響を与えている
上記の3つの条件を全て満たす必要があります。

不眠症の原因は、大きくわけて5つあると言われています(身体疾患、薬剤、薬物、精神疾患、心理要因、生理的要因)。ですから薬を飲んだからといって、眠れる体質になるとは限らないのがこの疾患の難しいところです。

当院でも、不眠で悩まれている患者さんは意外に多いのですが、ただ当院は心療内科ではありませんので、来られる患者さんは仕事や学校、人間関係のトラブルから生理不順の方、産前・産後のマタニティーブルー、更年期障害で来られる患者さんなど、何らかの女性特有の疾患の愁訴のひとつとして不眠を訴える患者さんがほとんどです。

肝心のお薬ですが、所謂一般的な「不眠症の薬」はなるべく控えるようにしています。挙児希望の患者さんは勿論のこと、その他の患者さんにもできるだけ不眠の原因になるような背景因子を取り除くカウンセリングとともに漢方薬を処方するようにしています。近年の不眠症の薬は非常に効果も高く、副作用も少なくなっていますが、やはり依存をはじめ、母子への影響などを考えると、おいそれと使える薬ではないのもまた事実です。漢方薬としては加味逍遥散や加味帰脾湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、酸棗仁湯などを使い分けています。これらの漢方薬には柴胡、酸棗仁、薄荷などの生薬が配合されており、安神作用と呼ばれる心をリラックスさせる効果があるとされ、同時に抗うつや気の巡りも改善する働きがあります。

当院は心療内科ではありませんが、婦人科の疾患には絶対の自信を持っております。婦人科疾患でお悩みの方で、不眠や抗うつなどでもお悩みの方、お気軽にご相談ください。一緒に病気に立ち向かいましょう。


広瀬レディースクリニック
薬剤師 広瀬久美子

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